張力理論を語る(1)~点を線で答える思考~
伝達系と連動系
はじめまして。
整動協会で映像教育部を担当している谷口一也です。
愛媛県松山市で鍼灸院を営んでいます。
これから定期的にブログも書いていく予定です。どうぞよろしくお願いします!
今回は整動鍼®の特徴である「張力理論」に触れていきます。
その前に、整動鍼の理解を深めるため基本の部分をおさらいします。
整動鍼®では鍼灸の働きを伝達系と連動系の2つに大きくに分けて考えています。
伝達系は、ツボの刺激を「経絡」などのルートを利用して局所に届けるイメージです。目的の局所に変化が起こるまでに時間がかかります。
連動系は、整動鍼®独自の概念で、2点間の重さのバランスを取ることで体本来の動きを取り戻します。ここで言う「重さ」とは、「重く感じる」という意味です。伝達系と違い、局所に届く反応はタイムラグのない瞬間的な変化です。
張力理論と経絡
これらの基本的な考えをふまえて、「張力理論」の話に入ります。張力理論は上の解説にある「連動系」にあたります。
張力理論は、痛みのある部位(問題のある部位)に対して、原因となる一点を探します。
引っぱり合う関係には必ず二つの点があるからです。この二点間の調整を症状に合わせて行います。
※定義は解説ページでご確認ください。張力理論
今回私がお伝えしたいのは、張力理論が生まれた思考です。常識を疑う思考と言ってもいいです。
「経絡」の存在が鍼灸治療を二千年以上の長きにわたって継承されてきた所以であることに疑問を持つ鍼灸師はいないでしょう。
「経絡」を前提とした教育を受けている私たち鍼灸師にとって、その前提を自由に切り離す思考は簡単ではありません。
私は「張力理論」を鍼灸師が使いこなせることに大きな意味があると感じます。
それは、経絡を切り離して考える必要があるからです。決して経絡を否定しているわけではありません。
ただ、運動器疾患には、経絡の利用に比べると張力を利用するメリットが勝ります。
張力を利用する2つのメリット
- 原因点を絞り込みやすい
- 動きの改善
二点の張力を調整するとは、問題のある点(発痛点)と引っ張り合う条件を満たしている点(原因点)を探すことになります。
線上や、大まかなエリアとしてではなく、点としてとらえることで原因を絞り込みやすくなります。
また、張力が整うと動きが良くなります。痛みのある部位へ鍼をして鎮痛できたとしても本来の動きが戻るとは限りません。
痛みの背後には動きの狂いがあります。張力調整を行うことで本来の動きを戻し、同時に痛みも解消できます。
メリットとして原因点が絞り込みやすいことをあげたのは、裏を返せば経絡では絞り込みにくい面があるからです。
それは、鍼灸師の「点に対して線で思考するクセ」と言い換えることもできます。
点に対して線で答えるのは鍼灸師のクセ?
点(発痛点)に対して線(経絡)で答えることは、ある程度の原因ルートまでは絞れたとしても、原因点までは絞れません。
点に線(経絡)で答える習慣が身に付いている鍼灸師にとって、線を前提としない思考に切り替えることは容易ではありません。
しかし、点に対しては点で答えるべきです。
その背景には「活法」の存在があります。当然「経絡」という概念は存在しません。活法には瞬間的に筋肉の張力を調整する方法があります。この張力を利用した調整をツボに当てはめ、
線(経絡)を外して、素直に点(ツボ)と伸縮性に富んだ体を観察することで確立されたのが整動鍼®の張力理論です。
活法が背景にある張力理論ですので、引き合う二点が経絡上にあるとは限りません。経絡を一度離して思考する必要があります。
点に対して、点で答える。
こう考えることができれば、これまで行ってきた鍼灸治療に加えて大きな武器となります。
線(経絡)に支配された鍼灸師ではなく、線(経絡)を必要なときに利用できる鍼灸師になれるのです。
2018年1月29日カテゴリー:整動鍼
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