マーケティングの常識を飛び越えろ!鍼灸師補完計画発動。
鍼灸院経営は苦しいよ
整動協会副代表の谷地です。
私が院長を務める快気堂鍼灸院白石は、今年の5月で5周年を迎えました。
開院する前から現在に至るまで、多くの方に「鍼灸院の経営は苦しいよ」と嫌になるほど聞かされてきました。
期待を裏切らず、快気堂も今まで3度ほど経営の危機に陥りました。
ですが、その度に考え、工夫し、どうにか乗り越えてきました。経営のずぶの素人であった自分も、危機を乗り越える度に経営者として成長してきていると思います。
快気堂鍼灸院の現状
現在、快気堂は週4日の営業となっています。2017年11月から北斗病院との共同研究が始まり、休みが1日増えました。
同時期に、鍼灸師を1名雇用しています。営業日が減った中での雇用に、不安はありました。
すぐにでも、スタッフに売上を上げて欲しいという気持ちが無かったわけではないですが、患者さんには自信を持って技術を提供したいので、研修期間を長めに設け、今年の5月にやっと本格的な臨床デビューとなりました。
そんな中、直近となる4月の快気堂の成績は、営業日数16日で、1日平均来院数は14.6人(ほぼ私の担当です)、新患数14人(1日平均0.86人)でした。
低迷していた2016年の11月と比べると、営業日は3日減っていますが、売上は2.3倍、1日平均来院数は2.5倍、1日平均新患来院数は1.75倍です。新患数は、枠が無くてお断りしている分があります。2017年の11月は新患が26人、1日辺りの平均は1.3人で、これが今までの最高です。
4月の状況は、私の施術方法だと、施術できる人数の限界に近いと感じています。
現在、一人治療院としては来院数、売上共に十分だと感じています。これからは、施術者二人体制になるので、来院数をさらに伸ばしていきたいと思っています。
早く卒業してもらうための鍼灸院
快気堂は「早く治って卒業してもらう」ことを目標とする鍼灸院です。
リピーターを収益の頼みとする既存のマーケティング手法からは、大きく外れています。
それでも、経営が成り立っているのは、患者さんの来院を促す今までにない戦略が功を奏しているからです。
多くの失敗の中からたどり着いたこの戦略を、皆さんにご紹介させていただきたいと考えています。
技術を中心に集客と経営を組み立てていくこの方針は、既存のマーケティングに違和感を抱く鍼灸師の先生にも、採用しやすいはずです。
まずは、この戦略にたどり着くまでの経緯から、はじめさせていただきます。
鍼灸師としての悦び
2016年4月18日、整動鍼セミナー脊柱編を受講し、わたしは当時存在した整動鍼セミナー3編を全て修了しました(現在は応用編3編が追加されています)。
整動鍼3編修了すると、臨床で「あ、治った!!」という感覚を患者さんと共有できる瞬間が抜群に増えました。
鍼灸師として、この「あ、治った!!」を共有する瞬間は、他の何物にも代えがたい悦びに感じました、
そして、こう思いました。「この悦びのためだけに仕事をしたい。」
僕たちの失敗
弱小企業にとって、唯一出来る経営戦略は「選択と集中」です。
「あ、治った!!」を患者さんと共有できる整動鍼を経営の中心に据えるならば、そこにリソースの全てを集中すべきだと、その時の私は思いました。
一つを選ぶということは、他を捨てると言うことです。
早速、わたしは純粋な整動鍼の施術に関連するもの以外を断捨離することにしました。
断捨離したもの(2016年9月に決行)
・美容鍼灸メニュー
・健康メンテナンスメニュー
・電気パルス・カッピングなどの機器類
・経絡治療など、整動鍼・活法以外の治療法
・リピート目的のトーク
当時、美容鍼灸、健康メンテナンスメニューは快気堂の売り上げの大半を占めていました。それを断捨離したことで、来院数・売り上げ共に順調に落ちて行き、11月には半分になりました。
1日平均来院数は9.1人→5.3人に、1日平均新患数は0.89→0.2に激減しました。
なんとか、巻き返そうと、今まで学んだ治療院マーケティングの知識を最大限に動員しましたが、一向に上手く行きませんでした。
「治療の成績は上がってるから、、、」「今度こそ、本当の波がくるから、、、」と、自分を鼓舞するものの、徐々に下がって行く成績に、眠れない夜を過ごしました。
反マーケティングの萌芽
幸いなことに、2016年10月から、整動鍼の提案者である整動協会代表・栗原誠先生による集患セミナーが、月1・全6回というスケジュールではじまりました。
栗原先生は、群馬県伊勢崎市の養気院、そして東京都港区のカポスと、整動鍼を中心に据えながら、全く異なる環境で鍼灸院経営を成功させています。
沈没寸前の快気堂にとって浮上のための起爆剤になる!と鼻息荒めで参加しました。
期待に胸踊らせ望んだ第1回。
栗原先生の言葉に衝撃を受けました。
「私は集患を意識してません」
??、、、集患セミナーなのに?
患者さんの立場で考える
禅問答のようなスタートに一抹の不安を覚えましたが、セミナーでは非常に重要なことを学ぶことができました。
全ての基本戦略の根底にあるもの、それは、「患者さんの立場で考える」ということです。
当たり前と思うようなことですが、これが1番難しい。
集患と言った時点で、経営者側の視点が強く入ってしまいます。「患者さんの視点で考える」ために、一旦、集患への意識を退けておく必要があります。
では、患者さんの立場で考えてみましょう。
患者さんは何を基準に「この鍼灸院に行こう」と決断するのでしょうか?
好感度と信頼度
足りない脳みそをフル回転させて6カ月、たどり着いたのは、患者さんが鍼灸院を選ぶ決め手は2つあるという結論です。
一つは「好感度」、もう一つは「信頼度」です。
『あそこの治療院、ステキだからぜひ行ってみたい!!』というのが「好感度」。
『この症状は、あそこなら治してくれるはず!!』というのが「信頼度」。
この「好感度」と「信頼度」が患者さんの心の中で絡まり合いながら、鍼灸院が選ばれていきます。
「好感度」と「信頼度」、どちらの比重が大きいかは、患者さんの症状や、求めるゴールによって変わります。
この視点で考えると、既存のマーケティングに鍼灸師が感じる違和感の正体が見えてきます。
既存の治療院マーケティングは「好感度」を上げることに特化していて、医療的な「信頼度」を上げることは重要視されていません。ここが、違和感の原因です。
マーケティングは好感度を上げる技術
マーケティングの肝はリピーターをいかに獲得するかにあります。これは、治療院マーケティングに限らず、全ての販促マーケティングに共通します。
理由は、コストの問題です。
新規の顧客を獲得するコストはバカ高いと、どのマーケティングの教科書にも書いてあります。
それに対して、一度、商品を購入していただいた方をリピーターにするのは、低コストでできると考えられています。
不特定多数の人に対してテレビや新聞に広告を打ったり、プレゼントキャンペーンをしたりするよりも、一度購入した方に、心のこもったお手紙を書くなど、コミュニケーションの機会を増やして親しくなる方が、コストがかからないのです。
マーケティングの最終目標は、新規顧客をリピーター化し、さらにファンになってもらう事、そして、広告無しでも永久に商品を買い続けてもらうことです。ライフタイムバリューという考え方もここから出てきます。
治療院マーケティングも同様です。最終目標は、永遠に通院してもらう事です。
「この症状なら治してくれる!」という医療的な信頼度が高くても、治ったら患者さんは通院しなくなります。それよりも、治療院や施術者を気に入っていただき、「また来たい」「ずっと通いたい」と思ってもらう事が大切なのです。
つまり「好感度」を上げることが、最重要ポイントになるのです。
マーケティング手法というのは、「好感度」を上げることに特化する性質をもともと持っているのです。
手術が大好き!は健康か?
施術の技術と成果に真摯な鍼灸師ほどマーケティングに違和感を覚えるのは、この辺が原因だと私は感じています。
鍼灸がエステなどのリラクゼーションに属すると考えるのであれば、好感度に特化した戦略は問題はありません。
しかし、鍼灸が医療に属すると考えるのならば、話は別です。
医療の代表である、病院について考えてみましょう。
「あの病院の雰囲気が好きだから」という理由で毎日通う患者さんは、健康と言えるでしょうか。
「先生の手術が好きだから、毎週お願いします」という患者さんは、すでに違う病気が疑われるレベルです。
医療と好感度マーケティングは、相性が良くないのです。
必要だったもの
鍼灸は「リラクゼーション」と捉える方もいますし、「医療」と捉える方もいます。どちらが正しいというのはありません。
ただ、「医療」と捉えた場合、既存の好感度マーケティングはうまくいかないということです。
では、どうしたらよいか。
これも、病院がヒントになります。
「頭が痛い、病気かな?脳梗塞かも!!」と思ったとき、ほとんどの人は病院に行きます。どうして、病院を選択するのでしょうか。
それは、「病院ならなんとかしてくれるはず」という信頼があるからです(本当になんとかなるかは別として)。
切羽詰まった患者さんが医療に求めるのは、ラグジュアリーな内装や、アイドルのようなルックスや、お得な健康情報ではなく、「何とかしてくれる」ことです。
整動鍼で早く治して、「あ、治った!!」を患者さんと共有する鍼灸院で成功するためには、「あそこなら何とかしてくれる」という病院と同じ類の信頼を獲得する必要があるのです。
ハンドメイド戦略
これに気付いた私は、信頼という観点で快気堂の全てを見直し、改革していきました。
作業は困難を極めました。めちゃくちゃたくさんの失敗をし、遠回りもしました。
なぜなら、自分が必要とする、治療院の信頼度を高めるための確たる必勝戦略は、まだ存在していないからです。
戦略は自分の手で作り出す必要がありました。
Webサイトの画像、文言、ブログの内容、問診の方法、患者さんへの接し方、、、などなど、文字通り一つ一つ検証を重ねていきました。
手探り状態は不安でしたが、栗原先生の助言を受けながら、未来を信じて改革を進めていきました。
3月の奇跡
苦しい時期は続きましたが、2017年3月、突然売上が急上昇しました。驚くことに、美容鍼灸メニューがあった頃の平均売上を上回りました。
5.7人と落ち込んでいた1日平均来院数は8.4人に、1日辺りの新患数は0.3人だったのが0.9人に回復しました。売上は低迷期の丁度2倍でした。
その後も、美容鍼灸頼みだった頃のような波も無く、売上は安定しながら上がっています。
目標としていた、患者さんと「あ、治った!!」を共有し、「今日で治療は卒業です」と言うのを心から喜べる日々が現実となりました。
鍼灸師補完計画 = 経営サミット
今年の8月19日(日)に、整動協会主催で「鍼灸師の為の経営サミット」を企画しています。
わたしは発表者の一人として登壇する予定です。
私が誇れるものは、失敗の数です。言い訳をすれば、チャレンジしてるからこそ失敗があります。失敗の度に、貴重な気づきを手に入れてきたつもりです。
サミットでは、改革のためにどのような事を行い、どのような結果が出て、何に気付き、どのように活かしていったか、詳細にお伝えしたいと思います。
信頼度を経営の中心に据えた鍼灸院が増え、大勢を占めれば、鍼灸の世界はもちろん、医療の世界を変革する一大ムーブメントになると私は確信しています。
鍼灸の新しい未来への手がかりを、私と一緒に探ってみませんか?
詳しくはコチラで。
2018年5月9日カテゴリー:経営の話
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