セミナーレポート(刺鍼即応編)「自信は体感から生まれる」
代表の栗原です。
7月28日(日)に「整動鍼 精粋 刺鍼即応編」が開催されました。このセミナーはカリキュラムの中で数少ない1日セミナーです。整動鍼を学ぶきっかけにしてほしいと思ってつくりました。当初は「入門 理論実践編」と名付けていたのですが、昨年に「精粋 刺鍼即応編」と変更しました。理由は、精粋という言葉が示す通り、選び抜かれたすぐれたものだからです。最初だからこそ、一番よいと思うものを提供したいと考えています。
実際に、このセミナーで行う内容は、整動鍼のエッセンスが凝縮されていて使用頻度が高いものです。私自身、毎日使っています。刺鍼即応編という名も、実際の内容を表しています。鍼をするとその効果をすぐに感じ取ることができます。施術者だけではありません。患者さんもそうです。
誰でも再現できる
鍼治療の効能や魅力を語って伝える努力は大切ですが、論より証拠を示すことも大切です。患者さんが変化を感じることができれば、説明は最小限で済みます。このセミナーに限りませんが、当会では、誰でも実感できる施術方法を提供できるように全力で努めています。
名人にしかできない技は取り扱いません。私が名人ではないので取り扱えないと言った方が正確でしょう。その代わり、私にもできる方法、つまり誰にでもできる方法を扱っています。誰にでも再現できることを整理して理論化したのが整動鍼です。練習さえすれば必ず手が届く範囲にあります。効果も動きの変化で判断することが多いので、客観性もあります。
シンプルな理論
整動鍼の理論は極めてシンプルです。体の各部に生じるテンションの乱れを調整します。具体的には硬い筋肉を和らげていくことが多いのですが、そのポイントを精密に定めているので経験と勘に頼る必要がありません。テンションとテンションの関係をマップ化しているので、マップに基づいてテンションを観察すると和らげ方がわかります。
経絡経穴学もツボとツボの関係を示していると言えますが、ツボ一つ一つに所属を与えている意味合いが強いです。整動鍼では経絡経穴学とは切り離して、ツボとツボの関係を探しています。テンションが連鎖していく道筋を利用します。経絡とは全く異なるものです。
経絡学説が流れの道筋を示すものなら、整動鍼の理論は、テンションの道筋を示すものです。この2つの理論は相反するものではなく、共存できます。経絡は「気血」などで表される物質やエネルギーの流れを整えるために生まれた学説です。いっぽう、整動鍼は力が伝わっていくルートを示すために生まれた学説です。臨床ではどちらも利用する方がよいです。
整動鍼の理論に基づいてツボを観察すると、関節や筋肉に生じている力のアンバランスが見えるようになります。繰り返しになりますが、経験と勘に頼ることなく、規則に基づいて観察すればわかるようになっています。
鍼灸のむずかしさ
鍼灸のむずかしさは上達の階段がわかりにくいことだと思います。慣れと上手さの区別も曖昧です。何ができて何ができないのか、人と比べることも難しいのです。人間性、権威性、経験、接遇、集客の中に技術的要素は埋もれてしまいます。
技術のカタチを鮮明にすることも整動鍼のテーマです。自分の課題がわかるので努力の方向性が定まります。上手くなるためにはとても大切なことです。誰でも名人に憧れると思いますが、現場でもっとも求められているのは、何ができるかです。できることを明確に語れる鍼灸師ほど信頼されます。
整動鍼はツボの位置を正確に定めているので「取穴がむずかしい」と言われることがありますが、正確なツボの位置を定められるから生じる課題です。正確なツボの位置があいまいなら、取穴の正解をつかむことは永遠にできません。整動鍼における正確なツボの位置は、関係するツボに変化が生じるかどうかです。整動鍼で使うツボは、必ずそのツボがもたらす変化を定めているので、確認することができます。
本当にむずかしいのは正解がわからないことです。整動鍼では、ツボがズレていることを自覚できるので、それが「むずかしい」という言葉になるのですが、正解と照らし合わせることができるので上達の道筋が見えます。整動鍼を始めた鍼灸師が勉強しつづけることが多いのは、こうした理由も大きいのではないかと思っています。
自信は体感から生まれる
整動鍼は理論がシンプルなので、座学の時間を多く必要としません。実際にやってみることで「このツボはこんな変化をもたらすのか〜」と実感できます。配布するテキストには、ツボの正確な位置や効果を記してあるので、あとで実技を振り返って整理することができます。
セミナーでもっとも大切なのは実感です。実感できないものには本気で取り組めないからです。当然ながら、鍼灸師自身が実感できなければ、患者さんに自信をもって施術できません。自信は体感から生まれます。
この雰囲気が好き
はじめてのセミナーは緊張するものです。出来なさすぎて迷惑にならないだろうかと考えることもあるかもしれません。全然問題ではありません。鍼治療を楽しみたい鍼灸師が集まっています。楽しむ気持ちさえあれば十分です。最初からすべて上手くできる人はいませんので、各々ができる範囲で楽しんでいただくようにしています。
今回の参加者の半数近くは完全に初めての方です。最近は整動鍼を学んでいる鍼灸師にすすめられたというケースが目立ちます。それもあってか、仲間意識みないなものがすぐに芽生えて、半日も経つと空気はかなり柔らかくなります。
技術セミナーですから、批判的精神で参加される方がいてもよいと思います。完全な理論も完全な実技もありません。常に課題を探し続けるのが技術屋の仕事です。受講者さんの意見や指摘がセミナーをより良くしていることは間違いありません。私にとって大切な学びの場です。
2024年7月29日カテゴリー:セミナーレポート