セミナーレポート(取穴復習編)「ツボの正しい位置はどこか」
代表の栗原誠です。
11月10日(日)〜11日(月)に開催されました。
ツボの正しい位置はどこか?
整動鍼ではツボの位置を正確に決めています。このおかげで高い再現性が保たれます。逆にいえば、どんなに優れた理論や判断があっても取穴がバラバラでは安定した結果を生むことができません。
それでは正しい位置とはどうやって決まるのでしょうか。「ツボの位置は目安で、一人ひとり位置が異なるから現場で判断していくしかない」と言われることがあります。しかし、これでは各々が経験と勘で正解だと思うことをやっていくしかありません。不正解がない代わりに正解にも到達できません。
「それぞれが正解をつくる」という考えは、鍼灸師には都合がよいだけで、患者さんの利益にはなりません。患者さんの利益を考えると、安定した施術効果を提供することです。そのために、整動鍼ではツボの正解をつくっています。どうやって正解をつくるのか説明します。
まず「ツボは病気を治すもの」という認識を改めます。「○○病には○○穴が効く」という情報が出回っていますし、多くの書籍でもこのよう
な表記が目立ちます。しかし、「異病同治、同病異治」という言葉があるように、病気の名前だけで治療法(ツボ)が決まることはありません。
体の状態を観察し、一人ひとりに合わせたツボを選ぶのが鍼
灸治療というものです。本来、病気に対してツボが決まるのではなく、体の状態や特徴に合わせて行うものです。状態を整えることで、結果として怪我や病気が治ります。
ツボは病気を治すところではない
ツボが病気を治すわけでも、私たちの施術が治すわけでもありません。ツボの役割は治りやすいコンディションを導くことです。そのツボを選んで的確な刺激をするのが私たちの仕事です。治るときもあれば治らないときもあります。
施術の評価(ツボの選択や刺鍼)は、コンディションづくりができたかどうかで判断し、そのひとつ先で「治った」、「痛くない」、「検査結果の改善」を評価するという二段構えが必要です。
こうした前提で考えると、ツボの正しい位置を示しやすくなります。刺鍼をした結果、体の状態がどのように変化をしたのかを観察し、その変化が再現できる位置が正しい位置です。整動鍼では、ツボごとに観察ポイントを厳密に定めています。
さらに特徴的なのは、その観察ポイントがツボであるということです。あるツボに刺鍼をすると、決まったツボに変化が起こります。このパターンは普遍的です。解剖生理学や経絡で説明できないものばかりです。ですから、ツボの連鎖パターンを「連動図」として表し、この連動図をもとにツボを扱っています。
それは別のツボ
この取穴復習編は、セミナーで扱ったツボの位置を復習するというだけの勉強会です。理論の解説も刺鍼もありません。取穴の解説と取穴の練習のみです。このような勉強会を開催しているのは当会だけかもしれません。地味な内容であるにも関わらず人気があります。
取穴の中には、誰でも知っている足三里も含まれます。鍼灸師の一般的な認識では「取れて当たり前」かと思います。整動鍼が生まれる前、10名ほどの鍼灸師を集めて「ここが足三里」と思うところに印を付けてもらったことがあります。予想通りばらつきを確認でき、最大で25ミリも違っている場合がありました。
上述したように、正しい足三里というのは、足三里が引き起こす変化を確認できるところです。背部や腹部にその位置を定めています。こういう基準から導かれた足三里の位置が正しいとなるわけです。「そこじゃなくても効いている」という意見は当然あります。おそらく別のツボとして機能しているのでしょう。ですから別の取穴方法を否定する必要はなく、他のツボである可能性を疑っていきます。整動鍼は足三里の一寸下に「元瑠」というツボを設定しています。
取穴の言語化
取穴を伝えるには、①正しい位置と②感触を伝える必要があります。①は伝統的な方法である骨度を利用しています。②は可能な限り言語化する必要があります。この言語化にどれだけ費やせているかが、このセミナーの価値を決めると思っています。
2日間ずっと取穴の練習ということもあって、言語化に使える時間も多いです。普段のセミナーではさらりと流してしまうことも、この回では妥協しません。ときには図式化したりディスカッションしたり、地味に盛り上がっています。
ツボの位置の検証する仕組み
ツボの正しい位置を指南するのが私の役目ですが、「現状ではここがベスト」という言い方をするようにしています。もっとよい位置があればアップデートします。正しければどのような変化をもたらすのか定義をしているので、一人ひとり検証が可能です。
これが本当に大事なことです。権威のある先生が「ここだ」と言ったとか、そういう決め方はぜったいにしません。定義に基づいてツボの位置を決めていくのです。
もし、私の伝えた方法で再現ができなければ私も位置を再検証する必要があります。セミナーが検証の機能を果たしているのです。整動鍼の再現性が高く評価されているのは、セミナーが検証する仕組みを兼ねているからです。
またね。
2024年12月13日カテゴリー:セミナーレポート