張力理論を語る(3)~局所鍼3つのデメリット~
映像教育部の谷口です。
前回は、張力関係には単連動と双連動の2つがあることをお伝えしました。
互いに引き合うパターンを把握することで、効果的なツボ刺激が可能となります。
過度に引きすぎている側に刺鍼することで、引き合う力を正常化し、動きの回復と鎮痛に導きます。
ここで素朴な疑問が浮かびます。
なぜ痛いところに鍼をしちゃいけないの?
その問いに答える前に、私からも質問します。
なぜ、痛いところ(局所)に鍼をするのですか?
私は整動鍼と出会う前、局所鍼を行う鍼灸師でした。症状のある局所へ鍼をする理由は、鎮痛効果が期待できるからです。
腰が痛ければ腰のツボに鍼をする。膝が痛ければ膝のツボに鍼をします。局所鍼で効果が得られる場合もあります。
ただ、効果が得られないケースも数多く経験してきました。多くの鍼灸師が共感できるのではないでしょうか。
この不確かな経験が少しずつ蓄積すると、自分自身や鍼灸そのものに不安を感じてきます。
自分に自信がもてる鍼灸術を探して数ある鍼灸治療法を次々と習うことになります。
整動鍼では局所に鍼をすることがほとんどありません。
それは、局所には症状を引き起こしている原因がない場合がほとんどで、むしろ局所に鍼をするデメリットが多いと判断しているからです。
局所鍼3つのデメリット
1. 痛みが増悪するリスクがある
痛みのある部位は、その組織が過敏になっています。鍼の刺激が強いと痛みが増します。
過敏になっている部位に最適な刺激量を加えることは容易ではありません。
2. 効果が限局的
鎮痛だけを目的としているのなら、局所鍼で良いのかもしれません。
しかし、鍼本来のポテンシャルを考えるともったいない方法です。
局所に対する鍼で事足りるのなら、鍼灸師の存在価値すらも危ぶまれます。
3. 原因が取れない
痛みには原因があります。その原因が痛いところ(発痛点)とは限りません。
むしろ痛みの原因は離れたところにある場合が多いです。これまで説明してきたように張力理論から考えれば理解できます。
これらのデメリットがある以上、局所鍼をお勧めすることはできません。
鍼灸師の自信
鍼灸師にとって局所に鍼をすることは、ある種の保険でもあります。
症状のあるところに手当てをしましたよ、と患者様に伝えることができますし、鍼灸師自身も安心を得られます。
困ったときの局所鍼。
そんな不安に満ちた施術から、いつかは解放されたいと私も思っていました。
局所には原因がないことを結果から証明し、さらに理論で説明できる張力理論。
施術を受ける患者様の心身の回復はもちろん、鍼灸師の自信回復にもつながります。
2018年3月31日カテゴリー:技術の話
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