セミナーレポート(整動鍼 基礎 脊柱編)「脊椎を手足のツボで操る魅力」
7月7日〜8日に「整動鍼 基礎 脊柱編」が開催されました。今回は脊柱編の魅力とセミナーの様子をレポートします。この脊柱編を含む基礎セミナー(脊柱編・四肢編・腹背編)は、まったくの初めての方でも参加できます。ベテランから学生まで大歓迎です。従来の鍼灸学にはない視点からツボの使い方を学べます。
それでは、このセミナーのテーマとなる脊柱について考えてみます。
経絡で考えると脊椎は奇経です。奇経は、十二正経に対して奇経は重要度が一段下がるような印象がありますが、そんなことはないはずです。しかしながら、十二正経と臓腑だけで考える癖がついてしまうと、督脈=脊椎が後回しになりがちです。
整動鍼では、むしろ督脈から思考を広げていきます。ただし、整動鍼では経絡を基調に理論を組み立てているわけではありませんので、奇経の脊椎という扱いはしません。そのまま脊椎として観ていきます。誤解のないように言いますと、整動鍼は経絡理論に対して否定的な立場を取っていません。経絡を出発点として理論を組み立てていないというだけです。
むしろ、脊椎から理論を展開していくと経絡理論と重なっていくところがあり、経絡の魅力と接することができます。
では、なぜ整動鍼は脊椎から出発するのでしょうか。それは生命維持にとっても活動においても、脊椎がもっとも重要であると考えているからです。極論になりますが、手足を奪われても生きていけますが、脊椎を失うと生きていくことができません。運動においても、ヘビのように脊椎の動きで自在に動ける動物もいます。人間とヘビを並列にして考えることはしませんが、脊柱の重要性を改めて考えるにはよい例だと思います。
歳を重ねると脊椎の可動性が低下します。逆に言えば、脊椎の可動性が低下しなければ年齢を感じさせない活力を維持できるということです。足が痛くなったり、肩が痛くなったり…、そういった症状に接する時、痛みの患部を観察するだけでなく脊椎の可動性をチェックすることが大切です。
実際に脊椎の可動性が上がると、肩関節や仙腸関節の動きがよくなります。客観的にわかるほど可動域が広がります。
今回の脊柱編では、頚椎1番から腰椎5番まで、一つひとつの脊椎に対するアプローチ方法を2日間を使って学びます。脊椎の生じる変化は、棘突起の左右のキワの緊張度で確認します。棘突起の両端に生じる緊張は、脊椎の捻じれのテンションとして考えられます。実際に脊椎の向きが変化していてもいなくても、左右どちらかに回旋しようとする力ははたらいています。その偏りを取っていくいことが、この脊柱編の目的です。
脊椎はニュートラルが好ましいのです。つまり、右にも左にもすぐに捻れる状態のことです。この状態をいかにしてつくるかということを整動鍼では考えます。具体的には手足のツボを使います。脊柱(脊椎)のテンションは、手足に連なっています。その証拠に、手足を動かすと脊柱がクネクネと動きます。特に子供は背骨の動きがよくわかります。手足のツボを使って脊柱を整えていくのです。脊柱そのものに鍼をしても脊柱は整えられますが、テンションが手足まで伸びているので、その機構を利用した方が効率がよいのです。経験的に、その方が効果の持続性が高くなります。
脊柱編で学ぶツボは細かいものが多く、受講者さんの多くが繊細さに驚きます。難しさを感じる人もいます。デモンストレーションと同じ変化を再現できると難しさを面白さが上回ります。
そもそものことを言えば、整動鍼だからツボが細かいのではなく、本来ツボというものはミリ単位で扱うものです。整動鍼は面倒なことだと思わず、丁寧に向き合っているにすぎません。整動鍼は特別なカテゴリのように思われることもありますが、鍼の可能性と丁寧に向き合っているにすぎません。従来の鍼灸理論と衝突することも矛盾することもありません。むしろ、整動鍼を学び続けることで経絡の意義に気づくことができます。
「証明されてはいないが経絡というものがある」と信じることで構築する鍼灸学には危うさがあります。鍼灸を実践することに信仰心は必要ありません。ツボと丁寧に向き合うことで得られるものを積み上げながら構築していく鍼灸学を私たちは目指しています。